はじめまして。
序章写真 : 中村温子
文 :安井ちさと
わたしのことを知っているかたも知らない方も、ここでは「はじめまして」。安井ちさとです。
陶磁で作品をつくっています。
自分のなかで、アーティストの定義が未だしきれていないため、アーティストとは言わないでおきます。
ここでは、上も下もなく安井ちさととして存在したいです。
この写真の中に写っているのは、2月29日~3月19日までスタジオ’Sで開催されていた、わたしの個展「わたしの在り処」の空間です。私の在り処、言い換えてみるとすると、感覚の在り処。訪れた人自身のそれが起動する装置のような場所にしたかった。
「わたしの在り処」。みなさんどのあたりにありますか?
みなさんに質問しておきながら、実は私自身「此処」というのは未だにありません。自分の感覚が動けば、「わたし、此処のあたり」というのも当然変わってしまうので、わたしはそれを小さい時からずっと、探したり、作ったりしてきました。常に感覚のいく先を追いかけているような心地でいます。それでも、この展示でようやく求めていたモノを体現できたような気がしました。
でもこれは、もうありません。期間が終わり、いまはまっさらな状態に戻されています。
この展示のあと、わたしはもっと日常的に、流動的に変化していく「わたしの在り処」を眺めるための場所が欲しいと思うようになりました。
●ブログを選んだワケ。
わたしの徒然を思うところを綴り、ちょっとひいて眺める場所がほしくて、ぎくしゃくながらもブログをはじめています。
それってすでにSNSでやっていたじゃない?と思われるかもしれません。が、それって、自分のための場所ではないのだなと気づいたのです。
他の人のフィー(ル)ドの隙間に居る感がすごかった。何かと何かの間を流動していたいという気持ちはあったのですが、SNSでは流動というよりも自分が埋もれていく感覚がものすごくて。でもそういうことをクリアに感じ始めたのは、最近のことです。
それまで正直、FBやInstagramに自分のことを書いていれば、満足できている気がしていました。なんだろう。「なにかしている」気にはなれていたのかな。発信をできているつもりだとか、繋がることができているつもりだとか。でも結局残っているのはなんだろう?と思った時に、あくまでわたしにとっては、ですけれど、あまりこれといって残るものないのだなと気が付いたのですね。
できているときもあったと思います。展示の情報発信だとか、なにか問題が明確なときの具体的なやりとり。友達との何気ない交流には励まされたし、振り返ってみて元気になるものもある。ただ方法としてわたしの生きる糧やなにかになっているかというと…という話。
「発信したい内容によってのコンテンツの使い分けをしなければならない。」先日とあるミーティングで、人と人のつながりを生むためのオンラインミーティングの仕方や発信のしかたについてブレストした中で、そんな発言がありました。
わたしがしたい作業が、SNSのなかでこんがらがっているのだなと、それを聴いてはっとしたのですね。
だからものすごくまっすぐに、自分と向き合うことに特化した場所を作ろうと思いました。
じゃあ、パソコンのWordを使うとか、日記に書くとかでもいいのでは?
そうですよねたしかに。
しかし。パソコンを使うと、当然ですがわたしの意識は「自分のパソコン」の中に居ます。それって自分の頭の中にいるのと私の感覚的には近いのです。パソコンの中が結構とっちらかっている、ということも一因。自分の記憶が入り乱れている場所に置いても、やっぱりどうも思考がクリアに見えないというのが実感としてあります。-パソコンの中の整理もしなければ、とは思う。
それと日記。手書きの速度の良さ、分量もあると思うのですが、それなら手紙にしたいかな。日記って、それもやっぱり自分の所有物で、他の誰も触れることのない場所なのです、わたしにとって。手放したい。
自分と向き合うときに、俯瞰もしたい。自分の中にあるものを自分の境界の外へ物理的に一度追い出さないと、わたしはそれが出来ない。他者が触れられる場所まで持っていきたいのですね。というのはわたし自身が他者の立場になりたいから、自分のことを他人ごととして眺めたいから。「へえ~。」と腕組みして眺められるだけの距離というのが欲しい。
前述したことと合わせて、だから、ブログなわけなのです。
これって、要するに「オープンスタジオ」とか、「公開制作」に近いものかもしれない。自分が試行している過程をみせるというのは。
レジデンスとか、たくさんのアーティストが集っているスペースってあります、集合住宅みたいな。あれも面白くて。
でもまずは、自分個人のスタジオで思考・試行していることをこの場で見せていく/外側から眺めることが出来たほうがいいなとわたしは思う。
そう思うとやっぱり、「私個人のブログ」がいいんだなというのを再度思うわけです。
このブログがなんとなく「こんな感じだ」というのが見えてかたちになってきた暁には、自分で集合住宅的なブログというのも立ち上げしてみたい気持ちはあります。
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ところで、一端自分の外側に放り出す。これっていうのは展示でもそうなのですが。ブログは展示ほど、なんというか命がけなものではなくて。もうすこしふわふわした状態を尊重する空間にしていくつもりです。漂う雲のような心地で。
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展示は宙(空)かな。
雲(ブログ)が晴れるとその向こうに宙(展示)がみえるのですが、また雲が流れて来て。みたいな掛け合いができるといいなあ。
(こういう話の跳び方を、普通にします。)
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ひとまず、この場所をつくった、ということで、なんだかざわついていたわたしのこころは、ふと落ち着きを取り戻しています。
ああ、そうブログって誰かのためになることを発信するイメージもあるのですが、此処は完全にわたしのために尽きます。
突き抜ける勢いで、私自身のため、です。極まりきれば、転じて「他者のため」にもなるかなと信じて極めます。
それと、一応書いておこう。
ただいまコロナカオスが世界に蔓延しようとしています。
人の心理も相俟ってどうも物事がシンプルに見えづらい状況です。ブログのはじまりにはそんな背景もあります。
これからは、「安井ちさとの思うところ」は此処になります。
よろしくお願い致します。
2020.4.23